■ 筑紫さん、これでいいんですか?
2009年12月01日(火)
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| その名もズバリ「筑紫哲也」という本を書店で目にしていささか違和感を禁じ得なかった。なぜならば、筑紫さんは周知の通り肺がんで亡くなったわけで、寄りによって喫煙の写真を表紙にする必要があったのか、という小さなギモンである。これって筑紫さんのジョークなんだろーか。ひょっとすると良くできたブラック・ユーモアなのかも知れない。 筑紫さんのヘビースモーカーぶりはつとに有名であったがこれがもとで命を落としてしまったとしたらもったいないと言わざるを得ない。 筑紫さんとの親交はあまり深くないがお互いに30代の頃、筑紫さんがテレビ朝日の「こちらデスク」のキャスターをやっていて番組に呼ばれたことがある。収録が終わってスタッフのみなさんとともに近くの居酒屋で会食をしたことをついこの間のように想い出す。このとき、アメリカで発行されたパロディー新聞「NOT THE NEW YORK TIMES」に話が及んだ。本家のニューヨーク・タイムズがストのため約3ヶ月発行停止を余儀なくされた。丁度そのタイミングに記者たち有志によって創られたのがパロディー版だった。約70万部も売れたそうだ。一見本物と見間違えるような出来だからパロディーとは気づかず読み進みよく見るとNOT THE…と書いてあることに気づき思わず苦笑する読者も多かった。私はすかさず「朝日新聞のパロディー版を創りませんか?」と筑紫さんに誘いの言葉を発した。「面白いね。でもうちの記者だけではなく幹部たちはユーモアを理解できないだろうから…。ニューヨークではキオスクで売ったそうだが東京では難しいよね。」と実現に悲観的だった。「筑紫さんと私と二人で創って早稲田大学のキャンパスで売りましょう」と言う私に「それもいいかもね」と筑紫さんはタバコをくゆらせながら笑みを浮かべたあと生ビールをぐいっと飲み干した。 私はタバコは昔からやらないのでケムリをそれとなくさえぎりながら話を続けた。 その後、NEWS23の実現に向けてキャスター選びをしていたTBSの関係の人から内密に「適当な人物をあげて欲しい」との連絡があり赤坂某所で会い、私は筑紫さんを推薦した。意の通り筑紫さんに白羽の矢が当たった。筑紫キャスター実現には少しばかり私のささやかな後押しが功を奏したかも知れない。 田中角栄を茶化したパロディー本「角戦争」(新潮文庫)には筑紫さんの推薦の言葉が載っている。私からの依頼に心良くOKしてくれた筑紫さんにはあらためて感謝の意を表したい。私がアメリカに家族とともに移住していた時、田中首相が逮捕され、某ラジオ局の計らいで筑紫さんと生電話インタビューをしたこともあった。 長期に渡ってキャスターを続けてきた筑紫さんにもほころびが見え始めた。オウム真理教とTBSの関係について「TBSは死んだ」と批判の言葉を吐いたが自身はキャスターを辞任することはなかった。 この一件でそれまで筑紫さんを支持してきたファンの多くが筑紫離れとなった。赤坂のスタジオに座りっぱなしのキャスター筑紫が事件の現場に足を運ぶことは決して多くはなかった。911事件に対する筑紫さんの立場に対して私は批判的になっていた。犯人はアルカイダのテロリストではなくホワイトハウスの自作自演と信じる私とは真っ向から対立するものだった。 筑紫さんがウェブサイトなどインターネットをやらないことも意外でありジャーナリストの資質にギモンを抱かざるを得ないものだった。 そこで今回の喫煙の表紙だ。アメリカでは過去の映画で喫煙シーンは削除する傾向にあるとさえ言われている昨今だ。テレビCMでの喫煙シーンはご法度だ。そんな厳しい時代に喫煙写真を堂々と表紙にする神経は理解しがたいが、ここまでくるとふてぶてしさに頭が下がる。 筑紫さん、これで良いんですか?
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