本音のコラム

■ 「アメリカは有罪だった」 2006年11月16日(木) 
 約10年前の1995年に邦訳され発売された「アメリカは有罪だった」<核の脅威の下に> (上下) をぜひ読んでいただきたい。(著者 エドワード・セント・ジョン  朝日新聞社 原書1993年刊)
原爆を投下したアメリカを裁判で裁くものだが、あくまでも「架空の物語」と筆者は断っている。判決はタイトルの通り「アメリカは有罪」。550ページに及ぶ長編でしかも上下2巻という力作。オンライン注文なら安く手に入る可能性ありだ。執筆の動機に入る前に略歴を読んでいただきたい。本来なら被爆国の日本人が書くべきテーマなのだ。今ならアメリカはもちろんオーストラリアでも「発禁の書」かも知れない。いずれにせよ私は著者の平和を希求する心に頭が下がるばかりだ。

★著者略歴
1916年生まれ。オーストラリアの勅撰弁護士。第二次大戦では、志願してオーストラリア軍に入隊、中東とニューギニアを転戦する。多彩なキャリアを積みながら、弁護士としての名声を高めていった。オーストラリア議会の論客、実業家、ニュー・サウス・ウエルズ州の最高裁判事代理、活動的な自然保護運動家、南アフリカ反逆罪裁判の公式オブザーバー、その他、慈善、教育団体の医院を歴任する。1994年(78歳)に死去。

★ 執筆の動機
<序> 1986年(70歳)、筆者はアメリカ合衆国から招かれた国際法の客員教授、リチャード・フォーク教授のシドニー大学法学部での講演を聞く機会に恵まれた。その中で教授は、もしも世界初の原爆が日本から米国の都市に投下されていたら(そしてなおかつ日本が負けていたなら)日本はその責任を追及され、東京およびニュルンベルグ(両軍事裁判)で有罪を宣告された被告たちと同様、戦争犯罪を問われていたに違いない、と語った。( )内、マッド注釈。
 筆者はこの意見について熟考してみた。フォーク教授の考えが正しいとするなら、同じ意味で米国はその戦争犯罪を問われ、同時に広島への原爆投下以来長年にわたり核の恐怖によって日本人の人間性を侵害し、平和を脅かしつづけてきた罪を問われはしないだろうか?さらに今や他の核大国が存在しているけれども、筆者は核兵器の歴史とそれに関連した国際法の研究をすすめていくうちに、米国はかつても今もこの脅威に対する責任を負っているという考えを持つに至った。
 1945年8月6日と9日に、広島、長崎に原爆が投下された際、米国の指導者はもとよりその責任を追及されなかった。だが、法に照らしてみると、広島の大惨事、およびその後全世界の人びとの心に植えつけられた核兵器による大虐殺の恐怖に対する責任を米国の指導者に追及する裁判が開かれてしかるべきではなかっただろうか?(中略)
筆者は合衆国大統領をこの容疑によって裁く法廷での物語を書こうと思い立った。あくまでも仮定のうえに成り立った架空の法廷ではあるが、原爆投下に至った経緯や,審理の場面で提示されたエピソードなどはすべて事実に基づく。又、法廷の場に適用される法律はすべて現実の法理論に従っている。
 こうしてできあがった筆者の頭のなかの架空裁判では、トルーマン以降の歴代合衆国大統領、および(願わくば)過去半世紀間の核の恐怖にピリオドが打たれる日までのすべての合衆国大統領が被告とされる。つまりこれは、事実上米国を被告とした裁判なのである。判決が下される日は1995年8月6日(広島への原爆投下からちょうど50年目)。(中略)
 本書は、核兵器の持つ犯罪性を認識し、全面的かつ具体的に軍縮を行うことによって進むべき唯一の道を示し、そして核兵器およびその他大量殺戮兵器を廃絶するための国際法をつくり出すことを目指す。そしてこの新しい世界を導いてゆくのは、またとない機会を与えられた唯一の超大国、すなわちアメリカ合衆国なのである。」



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