本音のコラム

■ 戦艦大和」の続編 2005年12月26日(月) 

grp1227002548.jpg 500×500 64K 真珠湾攻撃の日、12月8日を記念するかのように映画「男たちの大和YAMATO」が公開された。今年は戦後60年の節目ということもあって何かと「戦艦大和」が話題を呼んだ。十分の一の模型を目玉に館内狭しと展示している呉市の”大和ミュージアム”しかり、映画ロケ地見学ツアーあり、全長75センチの模型販売あり、永久保存版の写真集ありと大和人気あやかり商法のオンパレードだ。まっ、これらのブームは多分そう長くは続かないだろう。実は私が懸念することはまさに映画のことなのだ。「60年目の夏。魂を揺るがす、感動超大作発進。」この8月の新聞広告の見出しに続いて「1945年4月6日、3,333名の男たちは世界最大最強の戦艦『大和』とともに、愛する人、家族、友、祖国のために決戦の海へと向かった」とある。あえて「天皇のために」の一言がないのは製作者の意地かも知れない。映画の物語は「大和」の生き残りの老人が沈没地点に父親の遺灰を撒きたいという元上官の娘と出会って漁船を駆って現地に向かう。その途中、少年兵だった当時を回想する、というもの。不沈を誇っていた大和が米軍戦闘機に袋たたきにあうシーンは壮絶。海の屍(かばね)となった戦友たちのもとに帰って行った元上官の魂こそが我々日本人が共有すべきものではないか、と原作者と角川春樹氏は訴えているのだと思う。しかし、私はこれで満足はしない。原作にもあるように山本五十六長官が大和の設計者に話した、「これからは海軍も、航空兵力が大事で、大艦巨砲は要らなくなると思う」という忠告を海軍と大本営は理解できなかった。これをテーマにした映画の続編をぜひ見たい。

(東京新聞「本音のコラム」05.12.25)


■ 忘怨念会のお知らせ 2005年12月22日(木) 
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 今年一年間、いろいろな事がありましたねぇ。辛いこと、悔しいこと、悲しいこと、情けないこと、許せないこと…。世の中にはお気の毒としか言いようがない人たちがたくさんいらっしゃる。小泉政権の外交のオモチャにされた拉致被害者の家族や幼い我が子を殺された親御さんなど言葉のかけようもない。石油温風器の一酸化炭素中毒で死亡した方などは死んでも死に切れません。
 命あっての物種とは言うものの耐震強度偽装事件の被害者にとっては怒りのやり場もなく困惑の極みに違いない。
 さてさて、この年末のニュースを見ても理不尽なことが連発している。その中からいくつかをセレクトしてみた。果たして共感を得られるかどうかはわからないけれど、とにかく言いたいことだけは言っておこうと思う。で、大晦日の某所で”怨念”を晴らす、というか忘れると言うか「忘怨念会」を密かに開催することにした。早くも亀井静香、小林興起、野田聖子、海老沢勝二、鈴木宗男、姉歯秀次らの著名人のセンセ方から出席の申し込みがあった。

(1)天才少女、浅田真央ちゃん
国際大会で優勝しても年齢制限のため五輪出場は出来ないんだそうだ。「真央ちゃんを五輪で見たい!」と朝日新聞の社説にまでラブコールが登場するほどの”真央フィーバー”だ。見たいと思うのは私も同じだが、だからと言って何歳でもOKというなら、もし6、7歳の子供が並みいる大人たちを差し置いて優勝したら出場させなければならなくなる。女子フィギュアスケートはまるで小学生の年少組か幼稚園の学芸会みたいになってしまう。それでもいいんだろーか?

(2)黒ひゲイ危機一髪
今、人気急上昇中のハードゲイを売り物にしているタレント、レイザーラモンHG。その彼のキャラクターが入った樽にプレーヤーが順番に剣を刺していき、樽からキャラクターを飛び打出させた人が負けというゲームに対してちょっと待て!とイチャモンを付けた団体「セクシュアルマイノリティ教職員ネットワーク」(事務局・京都府宇治市)が現れた。この団体は玩具メーカー、トミーに対して文書で抗議した。「同性愛者やそれを連想させる人物を樽に入れて、剣で突き刺して『楽しむ』玩具の発売は同性愛者に対する差別で、こどもに偏見を植え込む恐れがある」と。
 果たして偏見を増長させるだろーか?子供たちはもっと単純に楽しむんじゃないだろーか。レーザーラモンHGの売りはカッコ良くて、道化的で、何と言ってもあの”フォー”の奇声こそが受けている。従来商品の「黒ひげ危機一髪」を「黒ひゲイ」とダジャレていることでも分かるようにジョークなのだ。玩具メーカーに抗議する前にレーザーラモンHGが所属する吉本興業にこそ抗議デモでもやればいい。ただし、「なにアホゆーてまんねん」と、大阪人に一蹴されること間違いない。

(3)左右エンジン装着ミスの日航ジャンボ
へぇー、飛行機のエンジンと言うやつは左右どっちでもいいのかと思ったら、それは間違いなんだそうだ。でもそのまま8カ月間気付かず約2700時間も飛行していたという。逆噴射装置が客室側に向かって作動していたそうだが、それでも墜落するわけでもなく、メーカーも機体への影響はない、と言っているとか。装備点検会社に文句を言う前にエンジンケースの検査間隔が規定より200発着回超過していることを見逃していた日航にこそ責任があるのと違いまっか?

(当コラムは緊急特別更新です。東京新聞「本音のコラム」ではありません)


■ サイコパス 2005年12月18日(日) 
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 カナダのドキュメンタリー映画「ザ・コーポレーション」(渋谷UPLINK)を見た。「企業を一人の人間として精神分析すると人格障害<サイコパス>であると仮定するところからこの映画は始まります」とパンフレットに書かれている。サイコパスは「他人への思いやりがない」「人間関係を維持できない」「他人への配慮に無関心」「利益のために嘘を続ける」「罪の意識がない」「社会規範や法に従えない」の6つに集約され、映画は”犠牲になるのは常に市民であり弱者だ”、という性悪説に立つ。今、問題の耐震強度偽装関連会社はもちろんだが、公害垂れ流しやタイヤ脱落により人身事故を起こしリコール騒ぎになったり過密ダイヤのため脱線事故を起こし多数の死傷者を出すなど企業の不祥事は枚挙にいとまがない。しかし、よく考えてみると「米国の利益のために嘘をつく」は小泉忠犬ポチにピッタリだ。サイコパスにランクを付けるなら歴史上最悪の組織は原爆を投下した1945年当時の米国ホワイトハウスである。なぜならば「本当は軍需産業の利益のためだが米国民には戦争を終わらせるため、という嘘をついた」。そして「大量の死傷者を出したことの罪の意識がない」。
 この映画の監督、ジェニファー・アボットさんの考え方に賛同した私は彼女に連絡をとり、例の原爆投下の米国の責任を問う私の絵本「リトルボーイとファットマン」を送った。「もしバンクーバーにいらっしゃるならぜひお会いしたい」というメールが入った。

(東京新聞「本音のコラム」05.12.18)

「ザ・コーポレーション」著者 ジョエル・ベイカン 早川書房
ドキュメンタリー映画の監督 マーク・アクバー、ジェニファー・アボット
渋谷UPLINK X/UPLINK FACTORY(TEL 03-6825-5503)で公開中


■ AntiWar.com 2005年12月11日(日) 
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 ブッシュ親分の顔色をうかがいながら自衛隊のイラクからの撤収を見合わせた小泉ポチ。ところが自衛隊を守っていた英軍とオーストラリア軍が引き上げるかも知れないという懸念が生じポチは心穏やかではない。
「復興支援」という大義名分がなんとなく胡散臭く、そのメッキもかなり剥げかかっているだけにポチは頃合いを見て撤収させたいと密かに考えているはずだがまさかブシュに刺客を飛ばすほどの勇気はない。
 一方、アメリカでは米軍の早期撤収を求める声が高まっている。AntiWar.comというウエブサイトは侵攻して以来現在に至るまでの米兵の死亡者数を棒グラフで月別に数字を示している。全員の名前・年齢・位・出身地などが開示されている。ほとんどが農村地域出身のマイノリティで25歳以下が半数を占めている。犠牲者の数はフセイン元大統領が拘束された2年前の12月から1600人以上、つまり拘束しても事態はまったく改善されていないということになる。そして、ついに合計2000人を越えてしまった。負傷者数は米軍の公式発表によると約15000人だが推測によれば48000人は下らないという。米兵の40%が登録によって招集がかかった、いわゆる州兵だ。ある日突然、イラクに送り込まれ、棺で無言の帰国となる。サイトには現在も出費がかさむ巨額な軍事費の数字が秒刻みに表示されている。さらにイラク市民の犠牲者数、最小27000人、最大31000人という表示を見ると心が痛む。

(東京新聞「本音のコラム」05.12.11)


■ 9.11の石綿(アスベスト)被害 2005年12月05日(月) 
 もしかするとブッシュ大統領は肺がんに罹っているかも知れない。なぜならば作業員を励ます、というパフオーマンスのために大統領は9.11のビル崩壊現場(グラウンド・ゼロ)に立ったからだ。アスベストの吸引による肺がん、中皮腫などの健康被害の疑いは決して冗談ではなく可能性があると言えそうだ。
 世界貿易センタービルの崩壊の際に許容量の27倍のアスベストや通常の約1500倍もの数値を示したダイオキシンなどの有害物質が飛び散った。グラウンド・ゼロから逃げまどう人はもちろん、崩壊後、現場に入り救助や消火作業にあたった警察官や消防士、がれき除去の作業員らは明らかに粉塵を吸い込んでしまった。米国の調査機関は周辺の住人も含めて25万人から40万人が環境汚染に冒されている、と議会に報告。ところがブッシュ政権は「呼吸に関しては安全」との見解を示し科学的、医学的見地から緻密な調査をする気配がないばかりか健康被害の可能性を組織的に隠蔽しようとしている。医師団は9.11の惨事の死者数より今後さらに多くの被害者が出る恐れがある、と指摘している。(英インデペンデント紙)
アスベストの危険性を放置し建設業界の利益を優先した、どこかの国の首相と官僚組織もブッシュ政権に驚くほど似ている。

(東京新聞 「本音のコラム」05.12.4)


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