本音のコラム

■ 戦争の勝利者 2005年10月30日(日) 
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 原爆投下の責任はルーズベルトとトルーマンにあり、と訴えた私の絵本「リトルボーイとファットマン」(七つ森書館)の英語版の翻訳家に会うために今月中旬、カナダのバンクーバーに出かけた。その前に立ち寄ったロサンゼルスで時差の解消と資料収集などに時間を割いたのだが大型書店で見つけた2冊の本に私は強い憤りと恐ろしさを感じざるを得なかった。その一つは「LIFE特集号」(100年間に世界に影響を与えた100の衝撃的な出来事)。1945年「広島」のページは原爆投下後2ヶ月の破壊された街の写真が掲載され、なんと死者は広島が8万人、長崎が4万人と書かれているのだ。犠牲者は約30万人という歴史的事実を明らかに隠蔽している。原爆投下の反省は微塵もない。もう一つは「THE CONQUERORS(勝利者)」。副題には「ルーズベルト、トルーマンと1941年から1945年、ヒットラーのドイツの滅亡」とある。2002年に発売されたものだが棚ではなく目立つように わざわざ平台に置かれていた。ユダヤ人を虐待したヒットラー政権を滅亡させた二人の米国大統領こそが真の勝利者なのだ、と歯の浮くような美辞麗句で持ち上げている。過去6冊の著書の全てが米国大統領に関するものだから著者はホワイトハウスの広報担当ではないか、と疑いたくなる。ヒットラーを極悪非道な"悪魔"と位置づけることで帝国主義の アメリカを正当化しようとしている。

(東京新聞「本音のコラム」05.10.30)

★LIFE (TIME INC. SPECIALS)
★THE CONQUERORS (Simon&Schuster 著者 Michael Beschloss)


■ 東京五輪 2005年10月23日(日) 
 2016年以降の夏季五輪の開催地として石原知事が「東京以外に考えられない」と名乗り出た。都庁の役人が作った書類を読みながらの記者発表だった。いつもの自信たっぷりな口調は陰をひそめていたけれどライバルの福岡が立候補していることに対して役不足だ、と一刀両断、傲慢さは健在だった。しかし、よく考えて見ると東京開催を都知事の一存で決定していいんだろうか、というギモンがわいてくる。五輪景気を当て込む気持ちも分からないではないが五輪拒否都民の気持ちも十分、考慮に入れてもらいたい。恐らく五輪の名を借りた公共工事が都内のあちこちで始まるだろう。都民の血税をジャブジャブ使われたんではたまらない。ただでさえ行き過ぎた応援ぶりを テレビで報道するのだから国内開催となればますますエキサイトするに決まっている。出産後、北京五輪で金メダルをとった柔道の谷亮子"ママさん選手"が東京五輪でも出場するかもしれない。「子連れメダルこそ人生の励みです」なんていうコメントは正直言って聞きたくない。いずれにしても東京中がやかましくなることは間違いないのだから素朴に招致賛成とは言い難い。もし招致したいのなら反対派の都民には五輪開催中の海外脱出の旅行用渡航費を負担するとか何らかの補助金を出すべきだ。もっとも、この費用だってもとをただせば都民税だから自分の身体から採血して輸血するようなものだ。「東京五輪反対音頭を踊りたい人、この指止まれ!」。

(東京新聞「本音のコラム」05.10.23)


■ ゴーン首相誕生 2005年10月18日(火) 
 ちょっと大げさに言えば"奈落の底"に突き落とされた民主党。その真の再生はよほど抜本的な改革が必要だ。すでに菅直人元代表や小沢一郎氏が非協力的な態度をとっていることでもわかるように前原新体制の前途は多難だ。ハリケーン・コイズミが通り過ぎて被害甚大の民主陣営の心的傷害は計り知れない。民主党に投票した有権者の気落ちもさることながら、今、最も頭を悩ませているのは前原代表自身かも。火中の栗を拾ったはいいけれど巨大風車に立ち向かうドンキ・ホーテよろしく、力の差は歴然としている。もうこうなったら嵐が過ぎ去るのを静観するしかない。そして、ポスト小泉の戦略を立てるのだ。そこで提案!有能な外人を代表に抜擢したらどうか。ご存じ日産のカルロス・ゴーン社長は苦境の日産を見事再生させたことで評価が高い。みずほコーポ銀行は43歳の英国人を執行役員に起用するという。プロスポーツの世界ではロッテ・オリオンズのバレンタイン監督やサッカー日本代表のジーコ監督など外人の起用が目立つ。奇策とサプライズの劇場型政治の小泉首相に対抗するには「民主党代表、ゴーン」しかないだろう。あの太く長い眉毛と鋭い眼光、そして明確なビジョンを掲げて社員を統率するパワー。ゴーン、ゴーン、ゴーン、彼ならブッシュや霞ヶ関の官僚の言いなりにならないだろう。ゴーン首相誕生に期待しよう。
 
(東京新聞 「本音のコラム」 05.10.16)


■ カウントダウン 2005年10月09日(日) 
 小泉首相の任期は来年9月末だが果たしてすんなり辞めるだろうか。9月12日の記者会見では「政権党の規定は重い」と述べ、さらに後継者については「さまざまな人が意欲を持っている。そういう人に活躍の場を与えたい」「見識、経験、使命感を持った人に継いでもらいたい」と退陣の意向は揺るぎないかのような発言をしている。しかし、これに騙されてはいけない。そもそも首相は公約破りにまったく自責の念を抱かない人だけに前言を翻す恐れは十分にある。自民党の続投要請があれば喜んで1年延期を承諾するに違いない。来るべき参院選も小泉首相の威光を借りて圧勝を狙う自民党は続投を視野に入れていないはずがない。400人のイエスマンを抱えた小泉内閣はまさにおとなりの将軍様並みのキム"ジュン"イル独裁政権となった。たしかに派閥、族議員の影響力や地位が低下するなど改革が進んだかのように見えるけれど肝心の高級官僚の天下りや社会保険庁を筆頭に霞ヶ関の税金のムダ使いをなくすことはできなかった。こんな小泉首相のエセ改革を私たちは静観するしかないんだろうか。そこで首相がめでたく退陣する日までの「あと何日」というカウントダウンを私のウエブサイトに表示した。 胸躍る気持ちを抑えつつ「もういくつ寝ると辞めるのかな?」とせめて指折り数えて待ち望むしかない。

(東京新聞 本音のコラム 05.10.9)


■ 国勢調査の目的 2005年10月02日(日) 
 総務省統計局が行っている国勢調査の目的がはっきりしない。調査票には「統計以外の目的には使用しませんから、ありのままを記入してください」と断り書きがある。しかし、ちょっと待てよ、統計をとって何のタシにするのかが明記されていないのはおかしいんじゃない?書き込む項目の中に「国籍」というのがあって「外国の場合は国名も書いてください」とある。不法滞在でもない者に国籍まで書かせるのはどう見ても行き過ぎだ。実はこれこそが調査の主たる目的なのでは、と思わず疑ってしまう。どこかの知事は事あるごとに「アジア系外国人の犯罪が増えている。治安対策が必要だ」と発言している。恐らく政府も同じ考え方なのだろう。データは最寄りの警察との共有、ということも十分あり得る。調査の結果、在日中国人や韓国人らがマークされる恐れがあることは言うまでもない。彼らにとってこれほど迷惑な話はない。さらに問題なのは所定の封筒に「調査票は、正確な統計を作成するために、調査員によって記入もれ、記入誤りなどの確認が行われますので、そのまま調査員にお渡しください」とある。つまり開封のまま渡しなさい、というのだ。調査票に不記載があって調査員に記載してください、と言われた私の友人は「記載するかしないかは私の裁量だ」と反論し市役所に抗議をしたところナットクの行く説明はなく、その後、調査票を引き取りにこなかったという。人種差別の調査に協力する必要はない。

(東京新聞「本音のコラム」 05.10.2)


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