本音のコラム

■ 腹話術対決 2005年08月28日(日) 
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 民主党の岡田代表から決闘ならぬディベート(討論)を挑まれた小泉首相はオペラ観劇を理由に断ったという。ところが真相は違うらしい。民主党の申し出に対して「よし、やってやろーじゃないか」と威勢のいいところを見せた首相だが、ただ一つ条件をつけた。弁の立つ竹中さんを横に座らせる、というものだ。同伴者つきの決闘など過去に例がないばかりか許されるはずもない、と民主党側は認めない。首相官邸側はイヤホーン着用による外部操作を認めるならいつでもOK、という代案を出した。これは米大統領選のディベートの際にブッシュ大統領が背中に受信機を偲ばせていた秘策を真似たものだ。これなら、たとえ岡田さんに突っ込まれても関係省庁の担当者がいちいち助言すればこと足りる。スローガン「日本を、あきらめない」を急遽、「決闘を、あきらめない」に変えた 民主党はさらに首相を追い込むべく切り札の提案をした。それは明らかに奇策だがテレビうけすることは間違いない。その奇策とは「腹話術対決」。「小泉腹話術人形」を操る竹中さんに対して岡田さんは「真紀子人形」で対抗する。岡田さんはすでに人気腹話術師のいっこく堂に特訓をうけており、真紀子節はもちろんだが、とくに辻本清美さんの「ソーリ、ソーリ、ソーリ、ソーリ」の声色に自信を見せつつ、勝算は我にあり、と胸を張る。

(東京新聞「本音のコラム」05.8.28)


■ 二人の会話  2005年08月21日(日) 
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 六本木の某コーヒーチェーン店で二人の男の会話を聞くともなく聞いていたら、その内容の過激なのに驚いた。いや、過激というより"身勝手"と言ったほうが正しいかもしれない。その一部を要約すると.....。
 「先日、"WE WILL ROCK YOU"というミュージカルを観たんですよ」Tシャツの上に半袖の上着を着た少し太めの30代前半らしい男が口火を切った。「ロックのボーカルグループとして世界的に有名なクイーンを讃えるやつね。私はオペラが好きですがこれもぜひ観てみたい」白髪が目立つ細身の60代の男がいま流行りのクールビズ姿で相づちをうった。「やっぱりロックはいいですよ」「そう、それなら、ぜひ"六区"でいこう」「広島六区のことですか?」「その通り!」「いやぁ、困ったなぁ。ぼくは広島に縁もゆかりもありませんから....」「目的は一つ。分かってるでしょう?」「つまり"刺客"ですよね?」「ラジオ局を恫喝して買収しようとした手腕を買っている。あれはまさに"刺客"そのものだ。感動した!」「そんなにほめられても....」「対抗馬を落選させたら郵貯で購入した国債を報奨金として支払う、という条件で手を打とう」「当選後は総理・総裁の椅子をいただく、ということなら.....」「じょじょ冗談じゃない。公認なしの無所属で出馬してもらう他に選択肢はない!」白髪の男は怒って席を立った。

(東京新聞 「本音のコラム」 05.8.21)


■ 東京裁判再考 2005年08月14日(日) 
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 「世界がさばく東京裁判」(明成社)という本が復刻版として発売された。「パール判事の東京裁判日本無罪論」(小学館文庫)とあわせてぜひ一読をおすすめしたい。東京裁判は勝者による敗者への"報復・リンチ"であり国際法からみても明らかに違法であることがよくわかる。85人の外国人識者が違法性を主張している。連合国側のインド人判事、パールが日本無罪論を主張したことは戦後、アメリカによって封印されてきた。正論だけに知られては困るからだ。当時のイギリスの政界や軍部ではパール判事への評価が高かった。戦争責任が裁かれると大英帝国の植民地政策そのものが批判の的となりかねない、という恐れを感じていたからだろう。空襲や原爆によって非戦闘員の日本人を殺したアメリカにも責任の一端がある、ということから私は「東京裁判の見直しを迫る非戦闘員の会」を立ち上げるため賛同者を募ることにした。首相の靖国参拝の是非よりアメリカの罪を裁くことの方が重要だと思うからだ。先の戦争を「大東亜戦争」と呼ぶことをアメリカは禁止し、「太平洋戦争」と名付けたけれどこれは間違いだから「米国アジア侵略戦争」に変更すべきだと考えている。「非戦闘員の会」監修による絵本「笑説・東京裁判」に要注目!

(東京新聞「本音のコラム」05.8.14)


■ 原爆の謝罪 2005年08月07日(日) 
 戦後60年特別企画と題したテレビ番組「ヒロシマ」(TBS)を観た。原爆投下の模様を別のB29から撮影したハロルド・アグニュー博士(現在84歳だから当時24歳)が60年後、初めて広島を訪れ、二人の被爆者と対面。原爆投下に対する罪の意識を問う被爆者の言葉に博士は物静かな口調だがきっぱりと言い放った。要約すると....「東京大空襲の写真は見たが(原爆も)同じだ。全部ひどいことだが銃弾や爆弾、原爆で死のうがどれも同じ。パールハーバーで多くの米兵も死んだ。戦争は罪なき人はいない。すべての人に罪がある。私は謝る気持ちはない。あなた方は生きているだけでも幸せだ」。
ネットで検索すると博士は戦後、原水爆実験で有名なロス・アラモス科学研究所の所長を務め、核兵器の研究者としては一目置かれている人物。 原爆開発に携わった物理学者とはいえ当時24歳の若さだ。その彼に"しょく罪の意識の有無"を確かめたり"謝罪の言葉"を求めるのはいささか無理があったと私は思う。
 むしろ、番組が執拗に追及すべきことは「トルーマンこそA級戦犯だ!」という視点からブッシュ政権のライス国務長官に「国際法に違反している原爆投下の是非」を聞き出すことだった。そう思いませんか、筑紫さん。

(東京新聞「本音のコラム」8月7日)

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【原爆テレビ特番批判】

 戦後60年特別企画として二つの特番が放送された。その一つは「ヒロシマ」(TBS)8月5日午後6時55分から3時間。ご存じ「ニュース23」のキャスター、筑紫哲也と広島出身のタレント、綾瀬はるかが進行係として登場。もう一つは「スクープスペシャル "恐怖の放射能人体実験 封印されたヒバクシャ全真相」(テレビ朝日)8月7日午後2時~3時30分。鳥越俊太郎と女性レポーターの長野が解説と進行を行った。
 「ヒロシマ」については「本音のコラム」(8月7日)にも書いたのでここでは簡単に触れておく。3時間という長さでも分かるようにかなり力の入ったものであることは間違いない。ところが欲張りすぎてかえって散漫になってしまったのが惜しい。綾瀬はるかが広島の実家に出かけて祖母から被爆体験の話を聞き出すシーンなどは消化不良だった。過去の辛い思い出を話したくない祖母の話を聞いているうちに綾瀬は途中で涙を流してしまい突っ込んだ質問もできない始末。おしなべて綾瀬の原爆に関する知識不足が目立った。原爆搭載機B29の発進基地、テニアン島まで筑紫と綾瀬に出向かせての撮影も空回り気味に見えた。番組の終わりに筑紫がまとめた言葉はいつもの無難なものだった。要約すると.....「"あのとき原爆はとめられた"これはもちろん私たちの願いですが、実際は(原爆は)使われたのです。核兵器を使わないためには少数派の意見を訊くことこそが重要なのです」
 ブッシュ政権が少数派の意見を聞く耳をもっているだろうか。どう考えても聞くわけないことは分かり切っている。歴史教科書みたいな模範的メッセージではブッシュ政権には何も伝わらない。
 「本音のコラム」(8月7日)にも書いたけれど原爆投下の責任は当時の戦勝国であるアメリカにあった。非戦闘員を殺すということは明らかに国際法に違反していたのだからルーズベルトとトルーマンはA級戦犯として裁かれなければならないはず。
 「スクープスペシャル」は米ソ冷戦時代の核実験が自国の人間たちをも実験材料にする、という残酷さをレポートしているのだが、それならもう一歩踏み込んで現在の米国防長官のラムズフェルドかライス国務長官に「原爆投下について謝罪する気はないのか?」と問うべきだった。あのマイケル・ムーア監督なら恐らくブッシュ大統領にアポなしで突撃インタビューを敢行したに違いない。その時のやりとりは多分こんなふうになるだろう。
ムーア「インド洋沖の大地震の津波被害をテレビで見てあなたは"広島と同じようだ"と話しましたね。」
ブッシュ「漁船が打ち上げられていたり崩れた家の材木が散乱していてまるで広島みたいだ」
ムーア「あなたは原爆投下直後の広島に出向いたことがあるんですか?」
ブッシュ「ノー、まだ生まれていなかった」
ムーア「原爆は人災、津波は天災。人災は防げたんですよ。トルーマンが"落とすな"と指示していれば」


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