本音のコラム

■ 属国神社参拝 2005年01月31日(月) 
 9ヶ月ぶりの対決である。2月中旬に行われる日朝サッカー戦のことではない。党首討論で首相の失言を引き出すうまさは野党随一の菅直人前民主党代表。その菅さんが党代表を辞したあと初の"対決"の模様をNHKが独占生中継した。
 菅さんの質問に首相は終始、開き直り、すり替え、茶化した。これに待ってましたとばかり「小泉発言録」と題したパネルを掲げて菅さんが応戦。やおら「発言録」のシールをはがし「妄言録」に代えたのは皮肉が効いて小気味よかったが首相が「参りました」というところまで残念ながら攻めきれなかった。靖国神社参拝については「するのか、しないのか?」と語気を荒げてたたみかけた菅さんだが首相は例によって時には笑みさえ浮かべながら「適切に判断します」を8回も繰り返す始末。
 "皮肉"を武器に挑んだ菅さんはより"辛口のパロディー"で首相に迫った。「小泉さん、あなたは靖国神社を"属国神社"と改名したら必ず参拝する、とブツシュ大統領に密かに伝えたそうだが、そのことを今ここで国民に明らかにすべきではないか?」と。極秘問題を突然暴かれた首相はうろたえながらまたまた「適切に判断する」とオウム返しに答えた。約4分間の最も重要なこの部分はピーピーという音とともに音声が消されて放送された。おっと、この属国神社の話はあくまでも私の創作にすぎないのだが...。

東京新聞「本音のコラム」05.1.30


■ 金髪力士 2005年01月25日(火) 
 モンゴル出身の横綱、朝青龍が最速十度目の優勝を果たした。負けが込んでいる日本人三役を尻目にバツグンの強さを見せつけた。外人力士の台頭は目を見張るものがある。白鵬、旭天鵬、旭鷲山、朝赤龍、安馬、時天空(モンゴル)、琴欧州(ブルガリア)、露鵬(ロシア)、黒海(グルジア)。幕内力士42名のうち10名、ほぼ4人に一人だ。身長2メートル4センチの琴欧州はマスクもちょっとした映画俳優並みでかっこいい。下手をするとK1に引き抜かれかねない。曙は横綱の名誉を汚して情けないけれど琴欧州なら格闘技でも頭角を現すに違いない。ところで、外人力士の中に金髪がいないのはなぜなんだろう。ひょっとしたら「伝統に反する」というキマリでもあるのかもしれない。ロシアの露鵬は黒髪に染めている、という噂だがまさかそんなことはないはず。まげが結えないカーリーヘアとかハゲは論外か。肌の色にも制限があるのだろうか。黒い肌の力士は見たことがない。K1に転向した戦闘龍は精悍な感じの褐色だった。2メートル以上の長身力士が増えたら土俵を一回り広くしなければならなくなるだろう。K1を引退したボブ・サップが角界に殴り込みをかける、などという話も近い将来、実現するかも。その時はまげのカツラ着用を認めることになる。しこ名は「茶婦龍」。国技としての伝統と国際化の波をどう折り合いつけるかが難しい。

東京新聞「本音のコラム」1月23日


■ 自民放送協会 2005年01月16日(日) 
 「この国を想い この国を創る」という自民党のスローガンを「あの米国を想い この属国を創る」と茶化したところ安倍晋三自民党幹事長(当時)から通告書というかたちの「脅迫状」を昨年7月初旬、私と中村敦夫参院議員候補(当時)が突きつけられた。このことを当コラムに書いた。私のパロディー作品をウエブ・サイトに転載していた中村さんに対して安倍氏は削除と2日以内に回答せよ、と強圧的に迫った。私と中村さんはそれぞれ別個に安倍氏宛に逆「通告書」を送信したが半年以上経った現在、返事はない。
 批判を許さない自民党の体質は今、問題になっているNHK特番「圧力」疑惑に象徴されている。NHK幹部と会い「偏った内容だ」と変更や放送中止を求めていた自民党の二人の政治家のうちの一人が安倍氏だった。二人は検閲疑惑を全面否定している。NHKも政治的圧力はなかった、と二人に同調した。番組のチーフ・プロデューサーが記者会見で圧力により変更を余儀なくされた、と語っていることと真っ向からぶつかる。どちらかが嘘をついていることは明らかだ。番組制作費着服などの一連の不祥事はもとより政治家の介入疑惑を払拭しきれない海老沢NHKの体質そのものが大問題。「この自民党を想い このNHKを意のままに創る」。ほくそ笑む安倍氏の顔が目に浮かぶようだ。NHKはJHK・自民放送協会に改名したらいかが? 

東京新聞 「本音のコラム」1月16日

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泣くな井上康生

 体重無差別で争う嘉納杯国際大会で優勝した井上康生選手がインタビューの際に泣いた。「父が....僕を助けてくれた....」。正月をはさんで7日間、親子は三食をともにして技の矯正に明け暮れたという。昨年のアテネ五輪でメダルなしに終わった屈辱を晴らすためにも優勝しなければならなかった。プレッシャーの大きさは想像を絶するものだ。長身のルイバク選手に強引に内またを掛けに行き、右胸を痛めてしまった。痛みをこらえての内またの技が決まった。
 クラスをあげての優勝は快挙に違いない。重ねた努力に頭が下がる。柔道王の異名をとる井上選手にはあえて「泣くな!」と言いたい。金メダルを獲ったシドニー五輪の表彰台に上がった時、母親の遺影を掲げて亡き母親に勝利を報告するポーズをとった井上選手。アテネ五輪では観客席の父親が遺影を胸にしていた。このことについて私は「本音のコラム」で「遺影はやめて欲しかった」と書いた。そして今回の「涙」である。井上選手が"世界の井上"と自他共に認める存在となるためには涙は禁物だ。     
 一流のアスリートは泣かない。現役を引退するセレモニーで「我が巨人軍は永遠に不滅です」と挨拶した長島さんは泣かなかった。80数年ぶりにメジャーの最多安打の記録を塗り替えたイチローも泣かなかった。バッターボックスに立っている自分を見つめるもう一人の自分がいる、と語ったヤンキースの松井選手。そう、この"冷静さ"こそが今の井上選手に求められることなのだ。そして何より井上選手を応援している人たちへの感謝の気持ちを率直に表現することこそが大切なのだ。そう思えば泣けないはず。君は北京五輪で"世界の井上"を目指す。次は笑顔で「北京を楽しみにしていてください!」と語って欲しい。

★当コラムは東京新聞連載の「本音のコラム」用に書いたものですがタイミングが合わず未発表のまま時間が経ってしまいました。どうしても皆さんに読んでいただきたいので、あえてここに紹介することにしました。私は前にも書きましたが五輪で金メダルを獲った者は同じ種目での再出場を禁止すべきだと考えます。実力の僅少差に泣いているアスリートにチャンスを与えることこそが重要だからです。その意味から一度、金メダルを獲っている井上選手は北京五輪への挑戦は止めるべきだと思うのです。聞けば井上選手は100キロ級から無差別級に変更しての出場を狙うそうですが、なんだか、これも意地になっているように見えてなりません。いずれにせよ真の国際的なアスリートとして認められるためには表彰台で涙を見せないことです。
(1月17日)


■ イラク大地震 2005年01月10日(月) 
 マグニチュード9の直下型地震がイラク・ファルージャに発生、大きな被害が出ている。米軍の攻撃により破壊された街が天災に見舞われ、ほとんどの家屋が崩壊してしまった。死者の数は十五万人を越え、がれきに埋もれた行方不明者を含めると二〇万人以上になる見込みだ。サマワの自衛隊は余震が続く危険地帯には出向かない主義だから救援は行わない。そのかわり、選挙によって誕生する新政権に五百十億円を無償供与する、と小泉首相は金持ちニッポンを強調する。新潟中越地震の被災者への救援が先ではないのか、という声も上がっているが首相は無視している。一方、被災状況を視察するためにファルージャ入りしたパウエル国務長官はバグダッドでの記者会見で「津波の被害は想像以上に大きい。これに比べたら我々の攻撃による被害はとるに足らない」と語った。ブッシュ大統領は被災者の救援活動を行っているアルカイダ系組織にポケットマネーから一万ドル(約百万円)を寄付した。ヤンキースの松井秀喜選手の五千万円と比べるといかにもケチ臭いという感は否めない。
 国連のアナン事務総長は「国際社会からの支援額が史上最高の三十六億ドル(約三千七百億円)に達したが米国の三億五千万ドルはいかにも少なすぎる。日本が国連の常任理事国入りを真剣に希望するならもっと多額の義援金を供出すべきだ」と語った。
 以上は元旦の私の初夢だが、これが"正夢"になるかどうかは定かではない。

東京新聞「本音のコラム」2005年1月9日


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