本音のコラム

■ 白黒歌合戦 2004年12月27日(月) 
 あの「紅白歌合戦」の対抗馬として民放が一丸となって制作する裏番組「白黒歌合戦」のリハーサルが終わった。果たして大晦日に問題なく放送されるかどうかは定かではないがまずは番組のハイライトを密かに紹介しよう。罪を犯した、と容疑をかけられた人物をスタジオに招いて「私はやってません」と釈明させる。視聴者からFAXと電子メールで賛否両論を募り、その場で数字を発表し"白黒をつける"というショッキングな演出。
 とくに注目されるのが「NHKのエビ・ジョン・イルに言いたい」。司会の鳥越俊太郎氏が歯に衣着せず、「辞めるのか辞めないのか!」と迫るとE会長が“♪あなたの過去など知りたくないの〜”と菅原洋一のかつてのヒットソングを熱唱。これを受けて容疑者の元チーフプロデューサーI氏が甲高い声で「こっちの受信料は甘いぞ、そっちの着服は辛いぞ、ホーホー、ホタル来い"と童謡の替え歌で応戦し聴衆の失笑を誘う。
 トリは小泉首相と将軍様のそっくりさん対決。横田めぐみさんのニセ遺骨騒動に是が非でも“白黒”をつけてもらいたいところだが番組は意外な方向に展開する。“♪白樺、青空、南風ぇ”と小泉首相が「北国の春」で金さんを讃えれば"捜し物は何ですかスミダン"と井上陽水の「夢の中へ」でとぼけてみせる。そして二人は杯を酌み交わしながら“♪固い絆に想いを寄せてぇ”と長渕剛の「乾杯」を合唱。
 さてさて、白組が勝つか、はたまた黒組が勝つか、泣いても笑っても、そして怒っても、あと五日で国民の審判が下される。
(東京新聞「本音のコラム」04.12.26)
#「最新パロディー2004.12.27」では、このコラムにパロディー画像を加えました。


■ 年賀ハガキの賞品 2004年12月19日(日) 
 「ハッスル、ハッスル」。格闘家の小川直也さんが中央郵便局前で大勢の若い局員と共に例のパフォーマンスを披露している姿をテレビや新聞が報じた。全国一斉に年賀状の受付を開始したという宣伝なのだが小川さんにぶっ飛ばされるのを覚悟であえて「チンケな年賀状の賞品は廃止しろォ」と私は叫びたい。
 「お年玉付き年賀ハガキ」の賞品は1等が5点あり、その一つがハワイ旅行。今時ハワイ旅行とはいかにも時代遅れではないか。その他、ノートパソコンやデジカメなどだが、そもそも当たる確率は低い。それでもニッポン国民は年末になるとついつい最寄りの郵便局に足が向いてしまう。何か特別の念力に吸い寄せられるかのように...。で、このハガキの売り上げは発行枚数が43億6800万枚、1枚50円だから約2200億円。原価は1枚83銭だから、たったの約36億円。粗利は年間、何と2160億円となる計算だ。賞品代や小川さんへのギャラ代を差し引いても純利益は天文学的な額になることは間違いない。 これって、一部上場の大企業でもトップクラス並みではないだろうか。
 郵政民営化を唱える小泉首相に言いたい。「郵政族議員と利権の綱引きをするヒマがあるなら年賀ハガキの収益の半分、1000億円を米軍の攻撃で死傷したイラク市民の遺族や病人らの救済義援金として寄付しなさい」と。「ハッスル、ハッスル、小泉さん!」

(東京新聞「本音のコラム」04.12.19)


■ 悪夢の島 2004年12月12日(日) 
 「ビキニ環礁でアメリカが行った水爆実験で第五福竜丸が被爆したのは、今からちょうど50年前。また、来年は広島・長崎の被爆から60年目にあたります。この間、核兵器がなくなったり、核戦争の危険が去ったかといえば....答えはNO!劣化ウラン弾が使用され、アメリカは実際に使用可能な小型核兵器を開発しています。核兵器の恐ろしさについて、あらためて考えてみませんか」という憲法フェスティバル実行委員会の呼びかけで先日、財団法人第五福竜丸平和協会事務局長の安田和也氏の講演会に出向いた。場所は江東区夢の島公園内の第五福竜丸展示館。新聞や書物で福竜丸の被害状況を知っていたのだが想像以上に悲惨なのだ、ということを認識した。ビキニ水爆の規模は広島の約1000倍。広島のキノコ雲の高さが1500メートル、直径が15キロメートル。ビキニ水爆は高さが4万メートル、直径は240キロメートル。半径120キロメートルだから東京に投下されたと仮定すれば沼津にまで到達する。東京都民はもちろん横浜市民のほとんどが即死。熱海の住民は火傷を負うという。関東周辺の各県は確実に死の灰の影響を受けることになる。2000回以上の核実験が行われ2万8000発以上の核兵器があると言われている。もはや地球全体が火薬庫でありダイナマイトだ、と言っても過言ではない。夢の島が"悪夢の島"に見えてその晩、私は夢にうなされた。
第五福竜丸 www.d5f.org/ 

東京新聞  本音のコラム 04.12.12


■ ウエスタン乗馬 2004年12月05日(日) 
 ウエスタン乗馬にうつつを抜かす引き金役になった二人の親しい友人の存在は私にとって大きい。"ノンちん"こと大林宣彦と"キヨ"こと尾崎紀世彦だ。今から30年ほど前、当時、CM監督として脚光を浴びていたノンちんがハリウッド・スターのリチャード・プロンソンを起用したCMを作った。大草原を裸馬で疾走するブロンソンが渋い声で「オー マンダム」と発する例のヤツだ。「ウエスタン乗馬はいいよ。一度乗りに行かない?」、このノンちんの誘いがなければ乗馬は一生縁がなかったにちがいない。レコード大賞を授賞したキヨとその日の深夜、車を飛ばして軽井沢に出かけ、翌日、早朝から馬に乗った思い出も忘れられない。34歳、会社を辞めた私はアメリカ一人旅の途中、コロラドのデンバーで中古のウエスタン・サドルを買うほど乗馬にのめり込んでいた。今年9月初旬に突然テレビ出演の話が舞い込んだ。「熱中時間」というNHK衛星第2放送の番組(11月21日放送)で趣味を紹介するものだ。こ30年乗っていない馬の話をしたら「それでいきましょう」ということになり、なんとウエスタン乗馬競技大会に出場してしまった。上位入賞8人は全て"持ち馬"だった。 私は借りた馬で30人中22位。成績はともかく心から楽しめた。練習中に痛めた背筋を治すために整体クリニックに通う毎日だが懲りずに来年はウエスタン乗馬の本場、アリゾナで乗るぞ、と意を堅くしている。

東京新聞「本音のコラム」12月5日


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