本音のコラム

■ 国民栄誉賞 2004年08月29日(日) 
 沖縄の米海兵隊ヘリ墜落事故が起きた時、小泉首相はアテネ五輪をテレビで観ていた。幸い死傷者が出なかったとはいえただちに現場に飛ぶくらいの真剣さがあってもいいと思うのだが首相にとっては日本選手のメダル獲得の方が興味があったのだろう。米軍に抗議して欲しい、と上京した稲嶺沖縄県知事との面会を首相は断った。事故現場を米軍により隠蔽されヘリの残骸などの証拠品を持ち去られたあと、稲嶺知事との面会を受け入れた。米国に正々堂々、ものも言えず、おまけに魂を抜かれた"属国"首相の真骨頂だがそんな腰抜け首相が"愛国心"で支持率再浮上を狙っている。シドニー五輪では女子マラソン優勝者の高橋尚子選手だけが「国民栄誉賞」を受賞したが今回は金メダル獲得選手全員に与えよう、と首相が強く主張しているという。栄誉賞の安売りだ、という声に対して「官邸に選手を招いて授与式をやればテレビや新聞が必ず報道する。ここが狙い目だ」と首相は情報操作の秘策を吐露したはず。満面笑みを浮かべた水泳の北島選手がオリーブの冠を首相の頭にかぶせ、金メダルをかじらせたりすれば首相は感極まって「感動した! 超気持ちいい」といつもの甲高い声を発するにちがいない。「国民栄誉賞」をもらいたいのは首相自身なのかもネ。

(東京新聞「本音のコラム」04.8.29)


■ シニア五輪 2004年08月22日(日) 
 アーチェリーの山本博選手が41歳の"高齢"で銀メダルを獲得した。優勝したイタリーの選手が弱冠21歳だから20歳の年齢差がある。山本選手のメダル獲得はロサンゼルス五輪の銅メダルから20年目だという。試合終了後に「金を取るのはあと20年後かも」と冗談を飛ばした。こんなコメントを発するのも人柄と年の功かもしれない。40歳を越えてのメダル獲得は偉業に違いないし、世のオジサンたちを元気づけたことだけは確かだ。ここで一つ提案がある。「シニア五輪」の開催である。例えば柔道なら体重別の他に「年齢別」を導入したらいい。50歳から59歳までを「シニア級」、60歳から69歳までを「スーパー・シニア級」そして70歳以上を「グランド・パパ(ママ)級」とする。現在、47歳の山下泰裕さんはあと3年で「シニア級」の資格者となる。
 最近、テレビCMでこんなのがある。ランニングシャツにステテコ姿の日焼けした爺さんがやおら鉄棒につかまりビューンビューンと力強く回転し、「○○○カードは永久不滅のポイントです」とナレーションがかぶる。この老人が昔、五輪でメダルを取った人かどうかは定かではないけれど、もしかしたら水道水漏れ工事のCMでしか見なくなった体操のメダリスト森末慎二さんの将来を暗示しているかもね。

(東京新聞「本音のコラム」04.8.22)


■ 首相の言い訳 2004年08月15日(日) 
 国会議員を対象にムーア監督の「華氏911」の試写会が開かれたが小泉首相は「偏向しているから観ません」と言って断った。なんだなんだ「偏向しているのはアンタの方じゃないのか!」とちょっと語気を荒げて嫌みの一つや二つ、切り返してやりたくなる。"あの米国を想い この属国を創る"首相こそがブッシュ大統領にべったり偏向しているのと違いますか? 聞けばホワイトハウスから首相宛に「ムーアの映画は絶対に観るな!」と釘を刺されたとか。もし本当なら哀れな話だ。
 小泉首相は8月6日、広島の原爆死没者慰霊式・平和祈念式で次ぎのようにあいさつした。「(前略)平和憲法を順守するとともに非核三原則を堅持する。(中略)核兵器の廃絶に全力で取り組む」と。おいおい、ホントかいな? それじゃあ首相に質しますがパウエル米国務長官がワシントンの日本の一部報道機関との会見で語ったこととの整合性はあるんですか ?日本の国連安全保障理事国入りに関連し、パウエル氏は「安保理の一員としての義務を果たそうとするなら、憲法9条は再検討されなければならない」と海外で武力行使を禁じている憲法を改正する必要があるとの認識を示したばかりだ。やっぱり「華氏911」を観るべきですよ、小泉さん!

(東京新聞「本音のコラム」04.8.15)


■ 出版サイン会 2004年08月09日(月) 
 のっけから本の宣伝で恐縮ですが8月10日、銀座の旭屋書店で出版サイン会をやります。「小泉首相来る!」のポスターが店頭に貼られているはず。本のタイトルは「リコール!小泉鈍一郎」(雷韻出版)。純ではなく鈍、糸偏を金偏に変えただけで"国民の傷みをまったく感じない鈍なヤツ」というイメージが強調される。その"鈍ちゃんそっくり総理"が午後6時から店頭で30分間演説を行う。いま注目の政治コント集団、ザ・ニュースペーパーでとくに人気の高い出し物<小泉支離滅裂スピーチ>だ。姿カタチはもちろん、しゃべり方までそっくりなのだがホンモノの首相の中身の薄さを誇張して笑いを誘う。このあたりの芸は天下一品だ。このあと6時30分から私のサイン会。胸に「属国」と印刷されたTシャツを着てサインは「小泉鈍一郎」とあえて書くつもり。同時に「属国友の会」の会員を募集、無料で登録を受けつける予定。8時からは懇談会と記者会見。さきの参院選中に自民党のスローガンをパロディーで批判した私に対して安倍晋三自民党幹事長から「通告書」という名の「脅迫状」が送りつけられた。暑中見舞いを兼ねて私は安倍氏に配達証明つきで「通告書」という名の「感謝状」を皮肉を込めて郵送した。鈍ちゃん総理と安倍氏にとって真夏の夜の悪夢になるかもしれない。


■ 世論操作 2004年08月02日(月) 
 小泉政権の世論操作は目に余るものがあると思いませんか?有事法案を国会で審議している時に国民の目をそらすために意図的に"パナウェーブ白装束集団"を出現させたことは記憶に新しい。タマちゃんだ、電磁波だなどと騒いでいるうちにいつの間にか有事法案が可決されてしまった。これを称して「一杯食わされた」というのである。
 警察庁の国松元長官が銃撃された事件で、犯行にかかわった疑いで警視庁に逮捕されていたオウム真理教の元信者らの起訴が見送られたが、これもまんまと「一杯食わされた」好例だ。なぜならば逮捕のタイミングが先の参院選の投票直前だったことがあげられる。国民をなめた小泉首相の「人生いろいろ」発言を民主党から突っ込まれっぱなしで選挙戦があきらかに不利となった。これを払拭するために"逮捕劇"を演出した、と思われても仕方がない。もう一つは国際テロ組織「アルカイダ」のメンバーとされる男が過去4回にわたって偽造旅券で来日し、新潟市のマンションに潜伏していた、という五月十九日の新聞報道。埼玉県在住のバングラディッシュ人男性がアルカイダとの関係を疑われ逮捕されたが組織と無関係と判明し釈放された。「アルカイダが日本を攻撃する」という"日米同時恐怖の演出"だった。
(東京新聞 8月1日)


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