本音のコラム

■ ドギーバッグ 2004年03月28日(日) 
 先日、熊本訪問の際に友人ら数人と2台の車で今、人気上昇中の大分県の観光地、湯布院に出かけ、ちょっと気の利いた土産物店が軒を連ねる街を散策した。予約しておいた和風の温泉宿に着き、飲めもしない日本酒の熱燗をチョコ3杯飲み、すっかり上機嫌で夕食をたらふく食べて大いに満足した。近くの池で捕れたやまめの甘露煮まで箸を付ける余裕もなく5人が一匹丸ごと、あわせて5匹残してしまった。「これ包んでくれますか?」と旅館の女将に頼んだところ意外な返事が返ってきた。「あのォー、お客様、申し訳ありませんが保健所から食中毒防止のためお持ち帰りは禁止されておりまして、、、」。どうにも腑に落ちないので後日、大分県庁に電話してみた。地域保健係の担当者が「たしかに指導はしていますがすぐに腐るとは思えない甘露煮までダメとは決めていません」ということだった。アメリカでは「お持ち帰り」のことを「ドギーバッグ」と言い、非常にポピュラーだ。飽食文化の代表格的なアメリカが残した食べ物を大切にしているのだから、わが国の外食産業や旅館組合などはもっと積極的に「ドギーバッグ」を啓蒙したらいい。ここだけの話だが実は前述の5匹の甘露煮を女将さんには内緒で自前の袋に入れて持ち帰ってきたのであります。
(東京新聞「本音のコラム #57」 2004/3/28)


■ アラブ人の発想 2004年03月21日(日) 
 ロックをかけたスーツケースの鍵を家においてきてしまったので仕方なしに緊急鍵開け屋に電話して開けてもらうことにした。昨年末、ロサンゼルスでの話である。米国移住30年という日本語の達者な中年韓国人が作業にとりかかった。細いドライバーのようなものを鍵穴に差し込みブルブルブルっと振動を与えると、ものの30秒もしないうちにパクっとケースが開いた。「すごい技術だ!意外と簡単なんだね」と手早さを褒めるとその鍵開け屋の親父さんが笑みを浮かべながらこう言った。「そう言ってくれのは日本人くらいだよ。アラブ人はそうはいかない。『そんなに簡単に開くならカネは払いたくない』とごねるんだからまいっちゃうよ。だからアラブ人にはわざとゆっくり作業をすることにしているのさ」。なるほど技術よりじっくり時間をかけることに価値がある、ということらしい。そんなわけでイラクの民主化を急ぐ米国のやり方はアラブ人にはそもそもそぐわないのかもしれない。ひょっとしたらあと50年や100年はかかるかもね。ところで前述のスーツケースの鍵開け代金は出張費を含めて48ドル。なんていうことはない、これなら新品のケースが買える出費だった。この次はロックを壊してでもこじ開けるぞ、と心に決めた。
(東京新聞「本音のコラム #56」 2004/3/21)


■ ミスターの入院 2004年03月14日(日) 
 長嶋さんが入院して早いもので1週間あまりがたった。人気テレビ番組「さんまのまんま」のさんまさんと、そして昨夜放送されたプレステの久米さんとの対談(録画)で見せたミスターの笑顔が印象に残った。この際、「国民笑顔大賞」か「癒し紫綬褒章」を政府ではなく、われわれ国民の総意で差し上げたらいいと思う。それにしても緊急入院の際に発した小泉首相のコメントはこの人の自分勝手な性格を表している。「びっくりしました。早く治って、オリンピックの監督をしていただきたい」。容態は一刻も余談を許さず、脳梗塞の原因の一つがストレスにあると言われている時に「オリンピックの監督をしていただきたい」と追い打ちをかけるようにプレッシャーをかけた。アテネで優勝するであろう長嶋監督に自らの手で国民栄誉賞の楯を渡したいにちがいない。ミスターの人気にあやかりたい、という打算がみえみえなのだ。実は首相には前科がある。ひざの故障で不調だった横綱貴乃花が優勝した時に「痛みをこらえてよく頑張った。感動した!」と大声で褒め、優勝杯を手渡した。構造改革が「国民の痛みを伴う」ことをアピールする絶好の場として横綱を利用した。無理がたたった横綱はその後、休場がつづき結局、引退するハメに陥った。
(東京新聞「本音のコラム #55」 2004/3/14)


■ ムーア監督に告ぐ! 2004年03月07日(日) 
 今、私はちょっぴり遊び心で実はかなりホンキでマイケル・ムーア監督にラブ・コールを送ろうとしている。来年八月、原爆投下60年を迎えるタイミングにあわせてムーア監督にぜひとも広島・長崎の原爆記録映画を作ってもらおう、というもの。すでに天木直人(元外務省レバノン大使)、田中康夫(長野県知事)、江川昭子、きくちゆみの諸氏が発起人となり賛同者を募る署名運動を始めている。映画のタイトルは"ヒロシマ・ナガサキ"になるか、それとも"グランド・ゼロ"はたまた"ブッシュよ恥を知れ"!"になるかは定かではないが、いずれにせよ日米同時公開、いや世界の国々で上映されるようにしたいと思う。
 米国の小型核研究の再開によりますます核兵器の使用が現実味を帯びてきているだけに核兵器による放射能汚染の恐ろしさを映像によって知ってもらうことが必要だ。ムーア監督はこの10日に発売される自著「アホの壁 in USA」(柏書房)のまえがきでこう語っている。「俺はな、君らが世界でただ1国、実際に核攻撃を受け、多数の犠牲者を出した国の国民として、君ら日本人こそが、世界を核のない未来へ導いて行ってくれるのを期待しているんだ」と。「ムーア監督・署名運動」の資料請求は左記の電子メールアドレスに!
(東京新聞「本音のコラム #54」 2004/3/7)


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