本音のコラム

■ ビキニ水爆実験 2004年02月29日(日) 
 太平洋ビキニ環礁でアメリカが行った水爆実験から明日三月一日でちょうど50年を迎える。当時、実験海域を航行していた静岡県焼津市のマグロ漁船『第五福竜丸』が死の灰を浴び、乗組員23人全員が被曝し、半年後に無線長の久保山愛吉さんが放射能症により亡くなり、その後11人が肝臓がんなどで死亡したことは比較的知られているが、延べ900隻近い漁船が放射能汚染を受け、このうち約三分の一が高知県の船籍で被災者は延べ2800人にのぼるということはあまり知られていない。因果関係は明らかではないが、一例をあげるなら、ある漁船の乗組員二十数人中四人ががんで死亡している。被曝した恐れのある遠洋マグロ漁船の元乗組員らを対象に、高知県が健康診断を実施することを決めた。ところが二千円程度の受診料は「法的根拠がない」という理由で元船員らの自己負担になるという。今まで何もしてこなかった上に受診料は払え、とは何事か!と思わず拳をあげたくなる。ビキニ事件後、政府は米国が支払う慰謝料七億二千万円の配分を決めたが、治療費を受け取った被災船員はわずか146人のみ。被爆者援護法は残念ながら広島・長崎の原爆被爆者にしか適用されず、水爆実験の被災者は完全に置き去りにされたままになっている。小泉首相に言いたい。「一刻も早く、手厚く援助の手を差しのべなさい!」
(東京新聞「本音のコラム #53」 2004/2/29)


■ 片乳ポロリ 2004年02月22日(日) 
 スーパーボウルのハーフタイムショーにおけるジャネット・ジャクソンのオッパイ露出事件はCBSによって全米にテレビ中継され大きな話題を呼んだ。このショッキングなパフォーマンスはどうやらヤラセだったらしい。新アルバムの発売に合わせた宣伝なら「あざといねェ」くらいで済まされるかも知れないがこれにはウラがあることがわかった。実はこの放送の途中に、過激なブッシュ批判で若者に人気のMove On(ムーブオン)というグループがCMを流す計画をたてていた。全米からブッシュ批判のCM作品を募集し、最優秀作品「Child's Pay(ツケは子どもに)」が放映されるはずだったのだがCBSは、自社のポリシーに反するという理由で、この広告を拒絶、放送は見合わされた。CMの内容はイラク戦争をはじめ国家予算の約半分という巨額な予算を軍事費としてムダ使いするブッシュ政権の政策を批判するもの。表現は決して過激ではないのだがジワーッと心に入り込む説得力のあるものだ。CM放映拒絶に対する視聴者の反発を恐れたCBSは何とか話題をそらそうと画策した。それが"片乳ポロリ"だった。ムーブオンのリーダー、エリ・パリーザーは50万人の反戦署名をブッシュ大統領に送りつけるなど弱冠23歳、注目の活動家だ。
(東京新聞「本音のコラム #52」 2004/2/22)


■ 反テロ愛国法 2004年02月15日(日) 
 米国コロラド州デンバー市に住むマイク・マジニスさんはいつもの通りカメラを肩に提げて街に出た。ホテルをスナップ撮影していたら警察官に咎められ拘束され2時間後に駆けつけたシークレット・サービスに執拗に尋問された上に高級カメラとフイルムを没収された。彼らの言い分は「ホテルにはチェイニー副大統領が泊まっている。不審な行動をとるものはテロリストの疑いがあるので愛国法に従って逮捕することが出来る」というものだった。そもそも、愛国法は9/11事件の直後にろくに審議もされないまま議会で可決されたというシロモノ。今、米国では"赤刈り"ならぬ"アラブ人刈り"の旋風が吹きまくっている。中近東、イスラム系男性を中心に1000人以上が何週間、何ヶ月も拘束され、約半数が国外追放の憂き目にあっている。反ブッシュのポスターを部屋に貼っていた大学生のアパートに、誰かのタレ込みで突然、シークレット・サービスが現れ、令状なしに部屋の捜索を迫られた。まるでヒットラー政権下のユダヤ人刈りのゲシュタポ並みではないか。愛国法の下に米国市民、居住者の権利がどんどん制限されつつある。ブッシュ批判の急先鋒のマイケル・ムーア監督が遊説中に逮捕される日もそう遠くはないかもしれない。
(東京新聞「本音のコラム #51」 2004/2/15)


■ フセインの穴蔵 2004年02月08日(日) 
 フセイン元大統領が隠れていたとされる穴蔵を残すか、壊すかで地元住民や米軍の間で論議を呼んでいる。もともと、この穴蔵は本当に存在したのかどうか私は懐疑的なのだが、まっ、それはさておいて、報道によれば任務を終えて本国に帰る前に一度は穴を見てみようと米兵がカメラを片手に訪れているという。一般の訪問は認められていないのだが、もし訪問客が増えると、見せろ、見せない、でもめるに違いない。結局、米軍は穴を壊すことを決定した。元大統領支持が強い地元では破壊賛成派と反対派に二分されていてどちらかと言えば保存を求める声が大きいという。地元の騒ぎをよそにワシントンのホワイトハウスの前庭に「穴蔵」を再現する計画が持ち上がっているらしい。もし実現すれば観光客が世界中から押し寄せることは間違いない。穴の入り口にブッシュ大統領が立ってフセイン拘束の模様を説明すれば11月の大統領選に好影響を及ぼすはず。一方、ブッシュ大統領の弟が州知事を務めるフロリダ州にあるディズニー・ワールドが「イラク・ランド」を近々、オープンするという噂がある。バグダッドの盗賊役はサダム・フセインのそっくりさんが演ずるそうだが自爆テロだけは起きないことを切に願うばかりだ。
(東京新聞「本音のコラム #50」 2004/2/8)


■ クラーク候補に注目 2004年02月01日(日) 
ウエブサイト(http://www.michaelmoorejapan.com/)で発表している。「ブッシュが勝てば徴兵制が復活するはず。18歳から25歳までの若者たちに言いたい"君たちは石油業界の金持ちのために戦わないしかいない。彼はプロの政治家ではないし、ましてや広告代理店に作られてもいない。クラークだ」と檄を飛ばす。NATO最高司令官だったクラーク氏をなぜムーア監督がこれほどまでに支持するのか?「型破りで深く大胆な知識を身につけ、現状に満足せず非常に独立心の強い男」と言われているクラーク氏。実は彼はコソポ紛争の指揮をとっていた際に"軍事行使における多国間協力の必要性"を説いてホワイトハウスの反感を買った。和平が合意された直後に職を解かれ除隊した。気骨のある人物が大統領になれば恐らくアメリカは変わるだろう。http://clark04.com/
(東京新聞「本音のコラム #49」 2004/5/16)


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