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新国立競技場が決着しない中、今度はエンブレムの盗作疑惑が浮上。夏休みでさしたる話題がないところからテレビのワイドショーでは恰好の材料とばかり飛びついた。禍中の人物・佐野研二郎氏は問題となったエンブレムの作者だ。経緯はすでに知られているので詳しくは触れないが、招致用エンブレムの存在を忘れてはならないのではないだろうか。カラフルな桜の花びら(リース)をあしらったデザインはなかなかインパクトのあるものだ。制作したGK Graohicsはデザイン意図をブログに書いている。<友好・平和の証と感謝の気持ちとして、世界各地へ贈られてきた桜をモチーフにデザインされています。また幸福を表すリースには「再び戻る」という意味もある>。 素晴らしいコンセプトではないかと思うのだが、なぜか、このエンブレムはあくまでも「招致用」だった。今、盗作疑惑で大もめにもめているくらいなら「招致用」を開催エンブレムに差し替えたら良いじゃないかと思うがいかがだろう。 実は、エンブレムデザインは一般財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のもとで一般公募されている。審査員は、日本グラフィックデザイナー協会特別顧問の永井一正、同協会会長の浅葉克己ら8名だ。応募資格があるのは、東京ADC賞やTDC賞、ONE SHOW DESIGNなど組織委員会が指定した国内外の7つのデザインコンペのうち、2つ以上を受賞しているデザイナー・グラフィックデザイナー、アートディレクター。当選作品に対する賞金・エンブレム制作と著作権譲渡対価は100万円(税込)。2014年10月に国内外から104作品(内、海外から4作品)の応募があった。「デザインとしての美しさ、新しさ、そして強さ。そこから生まれる展開力。」を審査基準に、入選3作品を選出し、うち1点を大会エンブレム候補と選定。佐野研二郎氏を取り巻く人脈を見ると受賞の方程式が解ける。永井一史は多摩美の教授仲間でありグラフィックデザイン界の重鎮、選考委員長の永井一正は父親だ。選考委員の長嶋りかこは博報堂の後輩。永井一正と仕事で繋がりのある経済産業省の佐野究一郎は兄。トートバッグデザインを依頼したTと大会組織委員会マーケティング局長のMは共に電通社員。 ここで問題なのは公式サイトのどこを見ても、他の誰が候補だったのか書かれていない。他の候補作品を見ることもできないのだ。ライブドアニュースだけが入選者を紹介しているがなぜか応募作品は掲載されていない。恐らく主催元の組織委員会から「公開しないこと」と釘を刺されているのだろう。もし、そうなら、この隠蔽体質こそが問題ではないか。 「人類の進化」を目指すマッド案の五輪エンブレム 話題の五輪エンブレムをさらに手を入れるとまったく新しい“創造性豊かな”ものに早変わりする。赤い丸にひもをたらすと、あらあら「赤い風船」になる。これならオリジナリティがあり問題はないはず。もう一つは東京電力のロゴマークにヒントを受けたもの。右上の赤丸は東電の3つの赤丸の右端とまったく同じ位置だ。しかも、東電のロゴは選考委員長の永井がデザインしたもの。ここまでくると“馴れ合い”の感は否めない。 インターネット上で「エンブレムと配色が似ている」との声が相次いでいるのは、スペイン・バルセロナのデザイン事務所「ヘイ・スタジオ」が東日本大震災の際に寄付を募るプロジェクトのデザインとして発表。同事務所は「似たようなコンセプトに寄せられた図形の組み合わせがよく似たものになるのは大いにあり得る」と大人の対応を見せているが、どうひいき目に見ても発想のパクリとしかいいようがない。 それでは、というわけで私は佐野エンブレムの代案デザインを創ってみた。
月刊「紙の爆弾」2015年10月号連載「世界を裏から見てみよう」第19回)
つづく
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