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昨年12月末から今年、1月中旬にかけてロサンゼルスに滞在した。訪米の目的は米国市民権を取得した娘に会いに行くことと韓国、中国、アラブ系の人々の目覚ましい勢力拡大ぶりを取材することだが、さらに韓国系の人々による慰安婦像建立の真相を把握することも加えなければならない。 ロスのマイノリティー、特にアジア系の数は年々増加の一途を辿っている。実は私たち一家は1980年から10年間、当時10歳と5歳の子供と共にロス郊外に移住した。約30年前から息子の通うハイスクールや住宅地に中国系が目につくようになり、20年ほど前の2000年あたりからはその勢力は郊外にまで延びた。昨年、カリフォルニア州の運転免許証書き換えのため試験場に行った時、私の顔を見て差し出された問題集がなんと中国語だった。日本語もあるのだが、てっきり中国人と見間違われたというわけだ。それほど中国人が多い証なのだ。娘の住むアーバイン市のエリアにはアラブ系向けの大きなスーパーマーケットがあり、ドでかいナンやシシカバブなど多種多様なアラブの食品や食材が売られている。10数年前になるがアラブ系の若者の野球の試合で近隣のユダヤ系住民の間で一悶着が起きたことがある。チーム名が「蜂起」「反乱」の意で使用される「インティファーダ」とか「ジハード」など、いずれもイスラム教徒による異教徒(ユダヤ系)への戦いをさす言葉だからだ。 ロス郊外のグレンデールという街の中心にある公園に例の慰安婦女子像が建立され、これに対してロスに住む日系人の団体「歴史の真実を求める世界連合会」が市を相手取って訴訟を起こした。一審は敗訴したが控訴している。米国代表の目良浩一氏に話を聞いたところ重要なことは「国連をいかにして、より建設的な方向に向けてゆくかである。そのためには、まず、日本人一般に広がっている“国連信仰”を打破すること。日本政府としては、国連の改革を要求し、改革が進まなければ、負担金支払いの一時停止をすることも辞さない態度で、真剣に要求するべきである。」と力説された。私はグレンデールの慰安婦像を見に行った。道を尋ねた韓国系の女性は公園の場所を教えてくれたが慰安婦像の存在は知らなかった。ただ、気になることはロサンゼルス・タイムズ紙が韓国系女性記者の取材による記事を大々的に扱っていたことだ。おしなべて日系人は韓国系コミュニティとは問題を起こしたくないと考えている。慰安婦像の除幕式には祝辞を述べたほどだ。二世、三世になれば過去の歴史に関心はない。これは、我が国も同じではないだろうか。
十勝毎日 第9回(月1回連載エッセー) 2016年1月26日
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